日本からは秋篠宮ご夫妻が出席決定。ジョージ王子は9歳にして国王の付添人「ページ・オブ・オナー」を務める。
2023年5月6日、英国で70年ぶりとなる戴冠式が行われる。国王チャールズ3世とカミラ王妃が、簡素化された式典で戴冠する予定だ。“ゴールデンオーブ作戦”というコードネームで計画されてきたこの戴冠式は、「長年の伝統、荘厳さに根ざしながらも、今日の君主の役割を反映し、未来に目を向けたものになる」と、バッキンガム宮殿の広報担当者が以前『Harper's BAZAAR』に語っている。
戴冠式は、実際の式典に加えて、2日間に渡ってセレブレーションが行われる予定とのこと(前日5日にはバッキンガム宮殿で国王主催のレセプションが開催される)。戴冠式について詳細をお届け。
From Harper's BAZAAR.com
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戴冠式とは?
英国の戴冠式は、君主の即位を認める、正式かつ象徴的な儀式で、そのなかで君主は戴冠し、さまざまな儀式的、宗教的なものを贈られる。また、英国国教会のトップとしての君主の役割も示す。
しかし、英国の君主になるために、まず最初に戴冠式を行う必要はない。チャールズ皇太子(現国王)は、2022年9月に母であるエリザベス2世が亡くなると、すぐに国王となった。
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いつ行われる?
チャールズ国王の戴冠式は、2023年5月6日(土)ロンドン時間午前11時(日本時間午後7時)から行われる予定。
また、5月7日(日)には戴冠式ビッグランチと戴冠式コンサート、5月8日(月)には「The Big Help Out」と呼ばれる全国規模のボランティアイベントが開催される予定だ。
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どこで行われる?
1066年以来、英国の戴冠式が行われてきたウェストミンスター寺院にて今回も行われる予定。1953年のエリザベス2世女王の戴冠式をはじめ、これまでに38回の戴冠式が執り行われている。
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何が行われる?
戴冠式は、他の戴冠式と同様に宗教的な要素を中心に行われると予想されるが、その他の面では、特に現在の英国の生活費危機と迫りくる不況を考慮して、これまでの壮大で豪華な戴冠式よりも簡素化された式になる可能性が高いと思われる。
チャールズ国王とカミラ王妃は、まずバッキンガム宮殿から「王の行列」と呼ばれる行列でウェストミンスター寺院に到着する予定。2人は、エリザベス女王の在位60周年を記念して作られた「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」を使って移動する予定とのこと。
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礼拝の進行は?
カンタベリー大司教のジャスティン・ウェルビー氏が礼拝を執り行い、伝統的に次のような構成で行われる。
The Recognition / レコグニション(承認) アングロ・サクソン時代の国王の評議会、“賢人会議”に遡る伝統で、カンタベリー大司教がウェストミンスター寺院の信徒に君主を紹介し、君主は舞台の中央(ウェストミンスター寺院の中央のスペース)に立って、人々にその姿を見せる。信徒は「神よ、王を救いたまえ!」と叫び返す。
The Oath / オース(宣誓) これまでの君主同様、チャールズ国王も即位の宣誓を行う。文言やフォーマットは時代を経て変わってきていて、エリザベス女王は、「法を遵守し、慈悲の心で正義を行使し、英国国教会の教義を維持する」と誓った。チャールズ国王の宣誓も同じようなものになると思われる。
The Anointing / アノインティング(塗油) 宣誓を終えると、国王は大主教によって聖油で清められて祝福を受け、聖別される。国王は1300年に作られたエドワード国王の椅子に着席。椅子の下には、スコットランド王の象徴である“運命の石”(スクーンの石)が置かれる。長方形の赤みを帯びた砂岩で、エジンバラ城に保管されているが、戴冠式のときだけ運ばれてくる。
The Investiture / インヴェスティチャー(認証) チャールズ国王はその後、コロビウムシンドニスと呼ばれる白いリネンの袖なしチュニックと、スーパーチュニカというゴールドのシルク地で作られた長袖のコートをまとう。そして、儀式用の剣と中世風のブレスレットや宝珠(オーブ)、宝笏(セプター)などが与えられる。“王の威厳”の象徴である戴冠指輪も、大主教によってチャールズ国王の右手の薬指にはめられる。13世紀から、この指輪にはルビーがメインの石として使われている。
Enthronement / エンスローメント(戴冠) 君主は戴冠式用の椅子から玉座に移動する。
Homage / オマージュ(忠誠の近い) 戴冠の後は、王族としての伝統儀式になり、カンタベリー大司教と他の王室の高位メンバーが君主に敬意を表し、忠誠を誓う。だが、チャールズ国王は、今回の戴冠式で王室メンバーたちが王の前でひざまずくのはやめにしたと報じられている。
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王妃の戴冠
The Crowning of the Queen / クラウニング・オブ・ザ・クィーン(王妃の戴冠) カミラ王妃も戴冠される。チャールズ国王の戴冠の後に同じように行われるが、より簡素化され、より短縮される予定。どのような冠や宝石がカミラ王妃に与えられるのかは、まだわかっていない。
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チャールズ国王とカミラ王妃はどの王冠を着用する?
国王が着用するのは、17世紀に作られた「セント・エドワード・クラウン」で、金無垢の枠にルビー、アメシスト、サファイア、ガーネット、トパーズ、トルマリンをセットし、4つのクロスパティ(十字)、4つのフルール・ド・リス(アイリスの花をかたどった紋章)、2つのアーチを配した王冠。また、ベルベットの帽子にエルミンのバンドが付属している。
その後、「インペリアル・ステート・クラウン」を着用する予定。こちらも同様に、ベルベットの帽子とエルミンのバンド、ダイヤモンド2868石、サファイア17石、エメラルド11石、真珠269個が付属している。このヘッドピースには、アフリカの第二の星とも呼ばれるカリナンIIダイヤモンドがあしらわれており、王室が植民地化された土地の略奪に関与していたとして物議をかもした。
この論争を受け、カミラ王妃の戴冠式用の王冠「クイーン・メアリー・クラウン」では、論争を呼んだダイヤモンド「コ・イ・ヌール」を世界最高峰のダイヤモンド「カリナン」III、IV、Vで新たに作り直すと報じられている。この石はエリザベス2世の個人的なジュエリーコレクションに由来するものだが、歴史家たちは、カリナンダイヤモンドは南アフリカで採掘されたものであるため、今でもイギリス帝国主義の遺物であると指摘し、この入れ替えを批判している。
チャールズ皇太子が戴冠するとき、カミラ夫人は2800個のダイヤモンドと、およそ105カラットのダイヤモンド「コ・イ・ヌール」がセットされた「クイーン・コンソートの王冠」を着用するとのこと。それは、エリザベス女王の戴冠式ではクイーンマザーが身につけていたものだという。
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戴冠式はどこで視聴できる?
戴冠式は、世界中の何百万人もの人々が視聴することが予想される。英『BBC』や米『ABC』『CNN』など、さまざまな報道機関がライブ配信を行う予定となっている。
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戴冠式には、誰が出席する?
ウィリアム王子とキャサリン皇太子妃を含む他の王室メンバーも式典に出席する予定とのこと。またウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃の長男ジョージ王子も出席決定。長女シャーロット王女も出席する可能性が高いが、末っ子のルイ王子が出席するかどうかは不明。
それでも3人の子どもたちは、バッキンガム宮殿に向かう王室の行列には参加を予定している。
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ジョージ王子がページ・オブ・オナーを務める
戴冠式では、チャールズ国王とカミラ王妃は、それぞれ4人ずつの付添人「ページ・オブ・オナー」を従えることとなっており、王位継承権第2位の未来の国王であるジョージ王子は、ほかの少年たちとともにその重要な役割を担うことになった。
8人のページ・オブ・オナーのなかで、9歳のジョージ王子は最年少。そのほかの7名は、チャールズ国王の親しい友人の孫や、カミラ王妃の孫や甥の息子といった面々となるそう。
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ヘンリー王子とメーガン妃は戴冠式に出席する?
ヘンリー王子だけがカリフォルニアから“とんぼ返り”で式典のみに出席し、メーガン妃は欠席することが公式に発表されている。
メーガン妃の欠席の理由は、戴冠式の日が王子と妃の長男アーチー王子の誕生日に当たるからだとされているが、「2022年9月にエリザベス女王の葬儀に出席した際、ゴシップサイトやSNSで服装や態度をバッシングされたことが本当の理由。出席しなければ叩かれることもない」という説も。
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参列する世界の皇族は?
世界の皇族のなかで、いち早く参列を表明したのが、モナコ公室のアルベール2世大公&シャルレーヌ公妃。また、日本からは秋篠宮ご夫妻が出席することが、4月11日の閣議で正式に決定した。
ご夫妻は5月5日にバッキンガム宮殿にて開かれる国王主催のレセプションに出席し、翌6日の戴冠式にも参列する予定。
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どんな音楽が演奏される?
バッキンガム宮殿は、クラシックや聖歌、ミュージカル、映画やTVなどさまざまな分野のトップによる12の新曲が戴冠式で披露されると発表。「音楽を愛し、芸術の擁護者である国王陛下は、国内外の才能を紹介し祝福する音楽プログラムについても、自ら関与されています」と声明で述べている。
式典の前には、コロネーション・オーケストラ(指揮:アントニオ・パッパーノ、コンサートマスター:ヴァスコ・ヴァッシレフ)による演奏が行われ、式典の最中にはアンドリュー・ネスシンハの指揮のもと、ウェストミンスター合唱団など5つの合唱団の聖歌が披露されるとのこと。
また、ミュージカル界の重鎮アンドリュー・ロイド・ウェバーが、国王とともに話し合って手がけたという讃美歌も披露されるという。
さらに、戴冠式としては初めて、ゴスペル合唱団のパフォーマンスやウェールズ語のパフォーマンスが行われると報じられている。
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戴冠式の招待状
バッキンガム宮殿は、戴冠式の招待状を公開している。アーティストのアンドリュー・ジェイミソンのデザインによるもので、水彩絵の具を用い、グワッシュ画法で手描きされた。
王室によると、招待状は2000人以上に発送されたという。
イラストには、戴冠式の紋章とグリーンマンが描かれており、「春と再生のシンボルとして、新たな治世を祝う」という意味を込めて、オーク、アイビー、サンザシの葉とイギリスの紋章の花の王冠をつけている。
カラフルな花のイラストは、チャールズが3人目の君主となることを意味する3組で全体に描かれている。花の中にはライオン、ユニコーン、イノシシが描かれており、これらはチャールズ国王とカミラ王妃の紋章から引用されたもの。
リサイクルカードに印刷され、ゴールドの箔押し加工が施されている。
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戴冠式の費用はいくら? 誰が負担する?
答えは、英国政府。政府が戴冠式の費用を負担するという。
生活費が高騰し、不況のなか、戴冠式がこれまでの式典よりも盛大ではなく、予算も少ないと言われている(1953年のエリザベス女王の戴冠式は、イギリス国民に157万ポンド(当時のレートで174万円、現在のレートで約5000万円)の費用を負担させている)。